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​猪骨(ししこつ)ラーメンができるまで

自給自足、そして猟師を目指して

東京のサラリーマンから瀬戸内の島へ

 いま思えば恥ずかしい話なのですが――、私は、東日本大震災という未曽有の危機に遭遇するまで「食糧はどこに行ってもお金さえ払えば手に入るもの」と信じていました。

ところが東京でも、震災直後は物流が止まった影響で、店頭から食料品が品薄状態に。そのときに初めて、「買う」という選択肢でしか食糧を調達できない、という現実を実感させられました。それまでは想像すらしたことなかった無力感でした。

 

 人間だって生き物です。自分で食べる物くらいある程度は自力で何とかしないと、と思い始めていろいろと調べている中で急浮上してきた選択肢が「狩猟」。動物を育てるのではなく、野生のものを獲って食べるというスタイルです。

 

 狩猟を行うためには免許や銃を持つための許認可やら面倒な手続きが必要でしたが、それは半年ほど時間をかけて何とか散弾銃もGET。

 

 「いざ、猟師の道へ」と思いきや……。

 

 関東圏で捕獲されるイノシシやシカは放射能が生物濃縮されてほとんどが食べられない値になっているとのこと。う~ん……、では、他の土地に引っ越そうか……? 私は長崎の出身なので、暖かい土地のほうが性に合ってます。「どうせ行くなら島がイイかも」とこのとき思い始めました。

「会社員として金を稼ぐ能力」<「生物として食糧を調達できる能力」

 という判断基準で思い切って脱サラ

 東京のど真ん中、東京駅直結のビルのオフィスから環境は180度心機一転、瀬戸内海のど真ん中、海にも山にも気候にも恵まれた瀬戸内の島で猟師を目指して移住。引っ越し早々より、地元のイノシシを捕獲・活用している団体「しまなみイノシシ活用隊」に声をかけていただき、猟師修行も兼ねて出入りさせていただくことになりました。

 

 そこで改めて食べたイノシシ肉の美味しいこと! 嫌な臭みは全く無く、赤身に滋養が感じられ、脂身にはイベリコ豚をも髣髴とさせる高級感漾う味わいでした。「こんなに上質な肉に付く骨のエキスは、さぞかし美味しいものに違いない!」と思いきや、現状では用途が見えずに山の中に埋設処理されている始末。

 

 その打開策としてひらめいたのが、ラーメンでした。

 

 「豚骨スープと同様の手法で抽出すれば、案外美味しいのでは?」という安直な思いつきからスタートしました。加えて、大三島には有名な「大山祇(おおやまづみ)神社」があって観光客でそれなりに賑わっているものの、ラーメン専門店がありません。どんなに人気のない駅で降りても必ずラーメン屋を見かける関東にいた人間としては軽くカルチャーショックでした。

 「誰もやる人がいないのであれば、私がやろう。どうせなら地域の特産品になるぐらいのクオリティを目指そう!」と考えて試行錯誤を繰り返し、平成27年度から約2000食を試作。その研究の成果が、今の「猪骨(ししこつ)ラーメン」です。

 

多くの方に力を貸していただき

​2018年4月、おかげさまでお店を開業することができました

 店舗づくりのためのクラウドファンディングでは、多くの方からのご支援をいただきました。試験営業中にお越しくださったお客さまからは、温かいアドバイスや率直なご感想をいただき、目から鱗の連続。関わってくださったすべての皆さまにお礼申し上げます。

 

 おかげさまで、2018年4月から「猪骨ラーメン」として正式に店舗として営業することができることになりました。

 まだまだ至らない点はあるかと思いますが、今後とも何卒よろしくお願いいたします。

​ 店主・吉井涼

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